初秋の夏の名残が消えゆく頃、
月下の夜風は肌には涼しく
シリウスが皓皓と輝く下で、
私は逍遥をしてはぶるっと震へ、
その途中で白い野良猫に懐かれし。


私は逍遥に疲れ、
岩の上に腰掛けると
白い猫はそこは野良猫、
私と一定の距離を保ちながら
寝そべり、
私から離れなかった。
それがなんとも居心地が良さそうで
野良猫はこれまで人間に対して警戒するしかなかったのだらうその生活からは
私の傍にゐる時間は解放されたのだらう。


私はといふと埴谷雄高の虚体を更に進めた杳体といふものをぶち上げ
埴谷雄高の限界を乗り越えるべく、
思索に耽り
――他人には理解できぬだらうな。
と自嘲し、
これが孤高といふものかと嗤ふしかないのである。


私の文学・思想は多分、私が生きてゐるうちは
誰にも相手にされず、
奇人変人の類ひに分類されるに違ひないが、
死後に誰かが共感してくれればいいやと
ここは武士は食はねど高楊枝精神で、
私の思索を深めることに全精力を傾けるべきとの覚悟は決まってゐた。


誰が何を言はうと私は孤高の思索者として生きる。


白い野良猫はすやすやと眠ってゐて
私が岩から立ち上がると
ビクッと起きて、
私とは一定の距離を相変はらず保ちながら、
私の逍遥のお供をしてくれるのであった。


――この猫は私の苦悩を解ってくれてゐる。
さう思ふと孤高も悪くないと私は思ふのであった。